買い物籠下げて街市へ

私が住んでいたのは旺角、それもど真ん中。一番近い路上マーケットは煙廠街で、普段はここで野菜を買っていたが、店の数が多くないので、休みの日には決まって朗豪坊裏の廣東道に並ぶ路上マーケットか、散歩がてら少し足をのばして大角咀の街市(公設の市場)、時には小巴(ミニバス)に乗って九龍城の街市に買い出しに行っていた。
香港では地元スーパーマーケットの野菜売り場はどこも貧相だし、売っている野菜は新鮮さに欠けていて買う気がおきない。日系スーパーは近くになかったし、あったとしても日本からの輸入野菜は高くて買っていられなかった。地元の人で賑わう路上マーケットの品は新鮮だし安い。歩いているだけでも楽しい。
いつも買うのは野菜、果物、肉、卵(新界の農場でとれた卵)、茸、豆腐や豆ト(揚げのようなもの)といったもの。らきょうの酢漬けや漬け物のたぐい、蠟腸(中華サラミソーセージ)、蝦米(蝦の乾物)、干貝(貝柱の乾物)、貝の類(聖子やアサリや扇貝)も時々買った。魚のつみれはよく買ったが、魚は調理が面倒なので滅多に買わなかった。通っているうちにどこで何を買うかもほぼ決まっていた。
路上マーケットや街市で買う野菜は量り売りだ。単位は「斤」(がん)。1斤は約600グラム。葉もの野菜1斤はかなり嵩があるので半斤にしてもらうことも多かった。果物でも5つで幾らという店も多く、ついついいろいろ買ってしまう。
路上のマーケットや街市での買い物ではおのおのが白いプラスチックバッグ(何故か魚屋は赤い袋のことが多かった)に入れてくれるので、手にいっぱいプラスチックバッグを持つ事になる。バラ売りの卵(プラスチックケースに入っていない)や小袋のらっきょうの酢漬けや豆腐(これもプラスチックケースには入っていない)、紙の袋に入った油がしみ出そうな蠟腸と、ごろごろした芋や人参、葉っぱもの野菜などをいっしょくたにエコバッグに入れるのは、なかなか工夫がいる。
そんな買い物の途中に雑貨屋で見つけたのがプラスチック製の籠。形が可愛くて、サイズも大から小まで何種類も重ねてあったので、とりあえず1つ買った。籠を下げて路上マーケットを歩くとなんとなくうきうき、籠からはみ出す野菜の葉っぱも愛おしく見えた。
その後さらに別のサイズを2つ買って、合計で3つ持っていた。籠に付いていた紙切れによるとタイ製だった。値段は1つ20ドル前後だったと思う。チープで可愛いデザインな上に使い方も自在で、買い物に使う以外にキッチンに置いて麺などの乾物や缶詰などを入れたり、部屋に置いて雑誌を入れたりしていた。
2つは東京に持ってきた。大きい方は20リットルのゴミ袋がぴったり入るので、今キッチンでプラスチックのゴミを入れるのに使っている。写真に写っているのは小さい方で、まだ出番がなく今は納戸で眠っている。


雑貨屋(店の名前分からず)
 旺角廣東道、八百屋などが並ぶ通り。