まかない飯のアレ

香港の食べ物屋では、店内や時には店の外にテーブルを出して店員が豪快にまかない飯を食べている場面によく遭遇する。山盛りのご飯に炒め物や蒸し魚や蒸肉餅などを食べていて、メニューより「それ」が食べたいと思ってしまう場面も多々ある。
そのまかない飯のおかずが入っているのは、必ずといっていいぐらいステンレスの皿だ。使い込んでほどよくでこぼこして艶のなくなったステンレスの皿に無造作におかずが盛られた姿を初めて見た時、軽いショックを覚えた。そのステンレスの皿はどう見ても食器ではない。ステンレスのボールやステンレスのザル、ステンレスのお玉と同じ道具だ。その道具におかずを盛ってガシガシと食べている。女性では出来ない芸当。なんというか、食事というよりエネルギー補給という感じだ。あんなステンレスの皿が欲しいと思った。
油麻地から旺角にかけての上海街は、料理器具が揃う所として有名だ。中華包丁や憧れの丸いまな板、業務用のさまざまなサイズの寸胴などなどが並ぶ。最近ではケーキ作りの道具専門店もある。
上海街のステンレス用品を扱う店を覗いて歩いたが、まかない飯に使っているステンレス皿と同じ形のものは見つけられなかった。しかたなく妥協して買ったのが写真のステンレス皿。どこが違うのかというと、まかない飯のステンレス皿には縁がないのだ。そしてもう少し深い。
縁のあるこの妥協品を何に使っているかというと、主に蒸肉餅を作る時に使っている。蒸肉餅は肉を薄く皿になすりつけるようにするのが本来の形らしいのだが、平たい皿で蒸すと蒸籠から皿を取り出す時に美味しそうな肉汁がこぼれそうになる。そこで少し深さのあるステンレスの皿に入れて蒸していた。蒸しあがったら、ステンレスの皿ごと大きめの皿に乗せてそのままテーブルへ。蒸肉餅以外にも野菜を蒸す時もこの皿に野菜を乗せてそのまま蒸籠へ。蒸し上がったら別の皿に盛りつけていた。それなりに満足して使っている。
でも、やはり、まかない飯のアレ、縁のないアレが欲しい。それでご飯を食べようというのではないのだが、欲しい。次回、また上海街をさまよってみよう。


上海街